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「がん教育」の授業を実施

 2018年11月8日、狛江市立狛江第二中学校で、「がん教育」の授業を、医師会からの講師として行いました。「がん教育」は、がんに関する知識やがん患者に対する理解を深めることを目的に、がん対策基本法にも盛り込まれた、国を挙げての取り組みです。狛江市にある4つの公立中学校それぞれで、がん教育をどのように進めていくか、養護教諭の先生方を中心に議論が進んでいます。

現在、我が国では一生のうちに男性ならば3人に2人、女性であれば2人に1人ががんを患うと言われています。一方で、がんと診断された後の5年後生存率は6割以上にまで上昇してきており、がんの種類による差がありますが、がんが不治の病ですぐに命を奪われてしまう疾患であるという状況からは大きく変わってきています。この変化は、がん治療の進歩および予防医学の充実といった成果が現れていると考えられています。

 がんを取り巻く状況はよくなっているように見えますが、だからこそ、がん予防の充実、がんを患った方々が安心して過ごせるような社会、御家族や御友人が孤独に悩まなくてもサポートが受けられるような社会を実現していくことが求められています。

 「がんどころか、病気すら無縁な元気な子供達に、何故がん教育を?」とお考えになる方も多いと思います。しかし、上述したような、「がんと共存する社会」となった現代だからこそ、未来を創る子供達に、その知識が必要なのではないでしょうか。他の先進国に比べ、がん検診の受診率の伸び悩みが我が国の大きな問題となっています。がんの恐ろしさばかりが強調されてしまう昨今の報道の中で、むしろ検診を受けるハードルが高くなってしまったり、必要以上に悲観的になってしまったり、誰にも話すことができなかったりと、がんを克服して、あるいは共存しながら生きる姿が、見えにくくなってしまっているように感じています。私も、がん治療医であるのと同時に、がんサバイバーという立場ですが、子供達の将来に少しでもこの状況を変えられるように、狛江市で働かせて頂く医師として、何とかお役に立てるように努力して行く所存です。

 狛江第二中学校では、第三学年の生徒さん140人にお話をさせて頂きました。テーマが重い印象を受けやすいので、できるだけリラックスして、しかも心に残るような形にしようと、クイズ形式を取り入れたり、白血病のがんサバイバーの方にお話を取り入れる等、工夫をしました。45分間で全てを詰め込むのに難渋しましたが、概ね好意的に受け入れて頂けたようです。子供達が真剣な目を向けてくれたことにとても感銘を受けました。

 医師会と教育委員会が協力していく必要があるこの試みですが、まだ全国的にみても十分な広がりをみせていないのが実情です。ただでさえ過密化する学校側のカリキュラムの中で、外部講師(医療者)を調整しての授業は、非常に難しいと言えます。学校数も多くない狛江市だからこそ、“小さいことのメリット”を活かして、医療と教育が密に連携して、実りあるがん教育を実現できると確信しております。市民の皆様のご協力があってこそのこうした活動でもあり、どうかご支援を賜れますよう何卒よろしくお願い致します。

トータス往診クリニック 大橋 晃太